以前、「日本/権力構造の謎」の著者であるカレル・ヴァン・ウォルフレンにインタビューしたときに彼は次のように話していた。 「日本の人々はほんとうに真面目だ。私の本も一生懸命に読んでくれる。でも、日本の一番の悲劇は日本の人々が真面目に大新聞を読み、テレビのニュースをよく見ていることだ」 と。
2014年4月10日木曜日
NHK問題、CMに登場する鳥越と蟹瀬
2005年2月4日(金)ワシントン・タイムスに掲載された記事(Credibility Crisis)の訳(一部省略)
東京 ――― 相次ぐスキャンダルで揺らいでいた、日本の公共放送NHKの最高責任者が先週「責任を取る」と辞任した。
プロデューサーが番組制作費を着服した問題などで深刻な打撃を受け、第2次世界大戦時の日本軍の慰安所に関するドキュメンタリー番組制作が有力政治家からの圧力に屈したという疑いで批判されるなかでの、海老沢勝二会長の辞任だった。
自民党幹事長代理・安倍晋三氏と経済産業大臣・中川昭一氏はNHKに従軍慰安婦に関するドキュメンタリーの内容を変えるようにNHKに迫ったと朝日新聞は報じた。
さらに、NHKのプロデューサーである長井暁氏は、「政治家からの圧力」により番組を担当していた者に「内容を変更」するよう業務命令があったと涙ながらに語った。番組で放映するはずだった、第二次大戦中の慰安婦制度は天皇に責任があるとした疑似裁判の部分や元慰安婦の証言を削除するよう命じられたと彼は言った。
NHK、また、安倍・中川の両氏は、政治介入のあったことを繰り返し否定している。
NHKの元政治部記者で現在名古屋の椙山女学園大学で教授としてジャーナリズムを教える川﨑泰資氏は政治圧力があったという主張を信じると言う。
NHKには志を持った勤勉なジャーナリストが少なくないが、いまだに影響力を行使する海老沢氏の恐怖政治の下では自由にものが言えないと川﨑氏は言う。川﨑氏自身、自分が制作した故田中角栄首相の派閥に関するニュースが自民党からの圧力によって、放送中止になったという経験を持つ。川﨑氏はそのニュース制作が原因で左遷された。
他の大手メディアのトップ同様、海老沢氏も自民党の大派閥を担当する記者であった。しかし、川﨑氏は、海老沢氏が「政治記者ではなく、自分の影響力を強化した政治屋」だったと言う。海老沢氏の例のように、日本の大手報道機関は権力との癒着を長い間批判されてきた。
「(ジャーナリストとして)一番よくないのは権力者のサーバントになることです。しかし、残念なことに今日の日本のジャーナリズムは真に独立していません」と政治評論家の森田実氏は言う。「恵まれざるものに希望を与える。これがジャーナリズムの基本的な姿勢ではないかと思います。人間愛というか、ヒューマニズムというかですね。そういったものをもって仕事をするべきだと思います。また、真実を追求することが根本ではないのかと思います」
それがジャーナリズムのルールだとしたら、日本では真剣に受け止められていないと専門家は言う。そのうえ、大手メディアはジャーナリズムと大企業との境界線をも消しているようだ。
毎日新聞、サンデー毎日に勤めた鳥越俊太郎氏は、ジャーナリズムの分野で賞を受賞し、テレビ朝日などに出演するジャーナリストであり、関西大学のジャーナリズムの教授でもある。しかし、鳥越氏は、彼の著書でジャーナリズムの倫理的問題を論じているにもかかわらず、テレビドラマに出演、また、保険会社のコマーシャルにも登場した。この矛盾に関して質問してみると、
「そんなことにいちいち答えなくちゃいけないの?」と不機嫌そうに聞いてきた。
結局、鳥越氏はコメントを控えた。また、関西大学もコメントを控えるということだ。
また、流暢な英語を話し、TV朝日やTBSでアンカーを務めた蟹瀬誠一氏もまた株式会社日本テレコムのコマーシャルに登場した。彼もまた明治大学で教授としてジャーナリズムを教えている。
蟹瀬氏は、日本のテレビ局に勤める以前は、AP通信、AFP通信、タイム誌の東京特派員であった。
蟹瀬氏はEメールで次のように答えてきた。
「ジャーナリズムのスタンダードとしてはもちろん好ましいことではありませんが、私の個人的な人生の選択です。批判も甘んじてお受けします。私は神に恥じるようなことをしているとは思っておりません」
蟹瀬氏はEメールで次のように答えてきた。
「ジャーナリズムのスタンダードとしてはもちろん好ましいことではありませんが、私の個人的な人生の選択です。批判も甘んじてお受けします。私は神に恥じるようなことをしているとは思っておりません」
蟹瀬氏が所属する明治大学文学部はこの件に関してコメントを控えるということだ。
彼らの他にもコマーシャルに出演するジャーナリストはいる。
「言語道断ですね。文明国でジャーナリストがコマーシャルに出るなんてあり得ないことでしょう」と同志社大学でジャーナリズムを教える浅野健一教授は言う。
アメリカと異なり、日本の報道機関は彼らに対する批判を聞こうとしない。また、多くの専門家も報道機関とのつながりがあるため、彼らを批判することに消極的だという声もある。
事実、ある著名なジャーナリズムの教授は、鳥越氏と蟹瀬氏を個人的に「よく知っている」ため、彼らのコマーシャル出演に関するコメントはしにくいと私に言った。
NHKとテレビ東京でアンカーをつとめた野中ともよ氏は最も複雑で矛盾した職業上の忠誠を持っているようだ。自分を「ジャーナリスト」と名乗りながら、アサヒビール社を含む大企業3社の取締役であり、日興フィナンシャル・インテリジェンス(日興コーディアルグループ)の理事長でもある。しかも、9つもの政府の審議会や委員会の委員でもある。彼女は自分のウェブサイトに自分が務めてきた多くの委員会を記載している。彼女は米ミズーリ大学コロンビア校の大学大学院にてフォト・ジャーナリズムを学んだこともある。
野中氏は1999年国連主催のWorld Press Freedom Dayに日本のジャーナリストの代表として参加、そこで、彼女が日本の代表であることは日本における報道の自由が発展している象徴だと宣言した。
しかし、野中氏もこの記事に対するコメントを控えた。
日本ではインターネット、ケーブル、衛星テレビの普及などにより、自国のジャーナリズムの欠点に気づき始めた人が徐々に増えてきたと専門家は言う。
また、「不況が長引く地方では、自分たちが生活する地域にかかわる情報を地方紙に頼る人が増えてきました」と森田氏は言う。また、そのニーズにこたえようとしている地方紙が「自信を持ってきました。この動きは、いずれ日本のジャーナリズムに革命的変化をもたらすことでしょう」
2014年4月9日水曜日
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